胃がん検診のありようを考える
古今東西,よりよい技術革新を導くエネルギーは,決して突然わき上がるのではなく,不合理な現実を直視しながら充電されるものである.赤さびたX線検診に対する無力感,憤りをバネに,今日まで議論が沸騰してきた胃がん検診の諸問題であるが,何やら無用の放電を繰り返して空だき状態となってきた雰囲気がある.このような閉塞感漂う中で,平成22年度は,2つの対極的光源というべき臨床現場と研究理論の立場から,熱い刺激を提供する講演会が開催された.主なテーマとなったABC検診の話題や科学的論法の仕組みをもとに,異なる視点から検診のありようを考えてみたい.
新たな検診システムにむけてのエネルギー
昨年平成22年10月9日,京都国際観光ホテルで催された“明日の胃がん検診を考える会”は,NPO法人日本胃がん予知・診断・治療研究機構(理事長 東邦大学名誉教授 三木 一正先生)のメンバーを招いて活発な情報交換が展開し,北海道大学 消化器内科学分野 浅香 正博教授の“わが国からの胃癌撲滅を目指して”と題する特別講演により,盛大で格式のあるイベントとして彩られた.ABC検診(血中ペプシノゲンとヘリコバクター抗体を測定することで,胃がんの危険度が低い順に集団をA群,B群,C群と層別し,内視鏡検査に誘導する検診システム)をはじめとする内視鏡検診の威力を誇示されたのは当然で,臨床現場で内視鏡の実用性,合理性を熟知する私どもにとっては受け入れやすい.将来,効率の良い検診システムとして揺るぎない地位を築くものと印象づけられた.私も平成13,14年山科におけるペプシノゲン法研究事業に関わった一人として,血清学的手法で集団を層別化する有用性を高く評価し,都市部の住民には半ば見切りをつけられたX線検診と対比すれば,効率性や受容性の輝きを肌で感じていた.
一方,すでに平成16年度厚生労働省がん研究班による“有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン(国立がん研究センター 祖父江 友孝主任)”で,この前衛的な検診手法は,死亡率減少効果を示す根拠が不十分であるため,実用には時期尚早の判断がなされていた.当時,後に述べる対策型検診の舞台では,熱された鉄板に冷水をぶちまいたような衝撃を食らい,新たな検診システムの構築を阻む足かせの現実を受け止めなければならなかったのである.
このような逆風を受け続けながらも,NPO法人をはじめとする参加者の熱気は凄まじく,三木 一正先生がABC検診の優越性を闘魂逞しく語っておられた姿が,私の脳裏に焼き付いて離れなかった.
余談
以下はどうでもよい私ごとの余談である.
ペプシノゲン事業に参加した当初から,X線検診に対する不合理性を批判する気分にはなれず,医師会の検診担当係として,目の前にある胃がん検診作業を黙々とこなす日々が続いた. 内視鏡的治療に熱血を注いでいた頃のある日,根拠が判然としないまま胃瘻が造設されていた超高齢者のチューブ交換をすることになった.内視鏡下に胃内のチューブを追っていると,高分化型早期がんが視野に入った.正義感のもとに,当然の型として内視鏡切除術の選択枝をとり,結果は術後大出血の顛末で意気消沈,自らの医療のなんたるかを考えさせられた.その頃から,内視鏡医にありがちな技術への陶酔,経験と感覚を尊重したスタイルを見つめ直し,誰のための何が目的の医療なのかを明確にする姿勢に変わったように思う.併せてまじめに消化器がん検診学会雑誌のページをめくり,疫学的な考え方に接しようとした.
検診を考える前に
検診を考える際に,ふれておくべき重要な前提がある.まず検診の目的は“がんを発見すること”ではなく“がんを発見して死亡率減少効果を得ること”である.参照用語として,胃がん検診ガイドラインから抜粋した解説を以下に記す.
“過剰診断 overdiagnosis
がんによる死亡を防ぐことを目的に,がんによる症状が発現する前に発見し,治療することを目的として,がんの検診が行われる.前提として,がんは放置すると進行し致死的となると一般的には考えられているが,放置しても,致死的とはならないがんは,一定割合で存在する.すなわち,がんが進行して症状が発現する前に,他の原因で死亡してしまうようながんを早期に発見する場合である.こうした例は成長速度が極めてゆるやかであったり,極めて早期にがんを発見した場合,あるいは,がんが発見された人が高齢者であったり重篤な合併症を有する場合に生じやすい.このようながんを診断し,治療することは,受診者の不利益につながることから,過剰診断と呼ばれる.“
さらに前提を続ける.人間ドッグのように,個人のがん死亡リスクを低下させることを狙いとする任意型検診と,住民検診のように,集団全体のがんによる死亡率減少効果をエンドポイントとして社会保障の一翼を担う対策型検診は,全く異質の事業である.これが認識されなければ,胃がんと胃潰瘍の区別をつけずに治療法を討論するようなものである.
個人が納得した手法で任意型検診を受けるのは別によい.それはさておく.国や自治体の施策として公的財源を投入する社会保障事業は,関係者をはじめ国民に理解を得られる手法を導入すべきことは論をまたない.必要性と効果 不利益を十分に検証しなければ,高速道路建設周辺のような,一部の利権がらみと揶揄される昨今の国政事情と本質は変わらない.本稿のテーマとしている対策型検診は,そのような立ち位置なのである.
ABC検診の峠道
ABC検診の有用性は体感できる領域に達しているが,科学的根拠による有効性が示されても,対策型検診として始動するまで,取り組むべき作業は山積している.以下に私見として問題点を列挙する.
唐突だがペプシノゲン測定は意義深いものなのか.ペプシノゲン陽性,ヘリコバクター抗体陰性のいわゆるD群に相当する集団の絶対数は,高齢者の極めて少数であろう.少し乱暴だが,D群を無視してヘリコバクター抗体のみ検査を行い, B,C群に相当する集団を要精検扱いにする考え方がある.ペプシノゲン,ヘリコバクター抗体測定キッドの是非やカットオフ値も,現在いくつかの案が示されているものの,混沌としている.山科での研究事業現場で実感した難点のひとつに,受診者のインフォームドコンセントや,高すぎる要精検率である. “胃がんと言われた!”と血相変えてとびこんで来られた方もあったが,”癌になりやすい”という文言に過敏な反応を示すのは,人の情けであろう.“胃の粘膜萎縮状態を血液検査で推測する云々“など予備知識のない住民にどう説明できるのだろうか.高い要精検率を背景に,特定の医療機関への利益誘導ではないかとの辛辣な声もあったという.
さらに最も重要な点は,精検としての内視鏡検査についてである.
対策型検診として,職域検診はともかく住民検診の管理が深刻である.精密検査がどこの医療機関でいつ行われたか.結果や経過を把握する仕組みはどうか.検診の目的である死亡率減少効果の評価が,がん登録などを通じて徹底される土壌はできあがっているのか.現行の胃がん検診の状況を検証すると,限りなく悲観的な展望と言わざるを得ない.また内視鏡検査は保険診療で行うということから,トラブルの責任は個々にゆだね,画像管理や精度管理も行政が関与しないことになっているが,それで良いのか.
内視鏡検査の実施にあっては,最近の経鼻内視鏡システムの蔓延のためか,十分な技術修練を積まずに導入している施設が存在するようである.そもそも不均一な技術水準,大きな診断能格差をチェックする尺度も機構も存在しない.住民は一体どの医療機関に受診すればよいのだろう.福井県立病院 細川 治先生(現在 横浜栄共済病院所属) が示すように,内視鏡検査自体に偽陰性症例が20%余り存在するという.二次読影など見逃しを阻止するためのシステムや,検査間隔を何年ごとにするかというアルゴリズムは,最近提唱されたばかりである.
以上の対応策を明確にしておかなければ,基礎工事の脆弱なビルが地震であっさり倒壊するように,運営が屯坐してしまう恐れが排除できない.
この場で主張するまでもなく,進むべき道筋として行政,医師会,学会が密な連携を構築し,メディアや公開講座などを通じて,住民への啓蒙を怠ってはならない.検診技術の精度管理については,主導すべき消化器がん検診学会が,平成16年に附置研究会“胃内視鏡検診標準化研究会” を設置した.すでに平成21年2月の府医消化器がん検診委員会指定講習会で,世話人である藤田保健衛生大学 芳野 純治教授に“胃内視鏡検診の標準化”のテーマで講演頂いており,胃内視鏡検診マニュアル(医学書院)は発刊済みである.
府医消化器がん検診委員会は,来るべきABC検診を想定して現状を鑑み,環境整備を実践しているつもりである.二次精密医療機関選定・更新基準を,およそ2年間隔で厳しい条件に改訂しているが,以上の諸問題を踏まえて関係各位にはご理解いただきたい.
科学的根拠を示せ
本年平成23年2月12日,京都府医師会館において開催された府医消化器がん検診委員会指定講習会では,国立がん研究センターの祖父江 友孝先生を招聘し,“がん検診有効性評価ガイドラインの考え方”と題する講演をいただいた.先に述べた胃がん検診ガイドラインを編集した責任者として名高いが,略歴では意外にも消化器診療に従事する機会が乏しかったようである.それは別にいい.検診とは何の目的でどのような手法を用い評価するかという思考法を,消化器がん検診の枠組みをこえて,科学的に解説していただいたことが重要なのである.
その中で従来から述べられている対策型検診のエンドポイントは,集団の死亡率減少効果に寄与することであり,現時点ではX線手法のみが有効な胃がん検診として普及している.さらに検診の不利益に対する検証も,車の両輪のように大切であることを述べられた.
このあたりの理屈が,臨床現場で疾患を早期に診断治療する勢力と,摩擦が生じる主因であろう.泌尿器科学会では,前立腺癌のマーカーであるPSA値が,検診ツールとして厚労省研究班から認められなかったため,学会独自にPSA検診を推進している事例もみられる.
私どもは,現場の声と検診理論が乖離したまま,いつまでもX線検診に耐えるわけにはいかない.それには新たな検診システムの科学的根拠を早急に示すべきである.無作為化比較対照試験は,信頼性は高いが完結するのに長期間を要するため,現実的ではなかろう.他方,短期間で目途がたつ症例―対称研究,コホート研究は,徐々に着手されている.新潟では自治体が関与した内視鏡検診の成績が示され,X線検診と遜色ない死亡率減少効果が示されたことは,特筆に値する.
京都でも日本多施設共同コホート研究の一環として,ABC検診がいよいよ始動する.遺伝子マーカーで表現される個人の体質と生活習慣が,疾病とどのように関連しているかを明らかにし,予防対策に役立てようという研究で,採取した血液を用いてABC検診を実施する計画である.6月現在,京都府立医科大学 渡邊 能行教授が中心となって準備作業中であり,京都府医師会を通じて内視鏡検査を担当する二次精密医療機関の募集,広報が進められているところである.母集団を設定し,広域の被検者を長年にわたって追跡調査することで,大規模なデータの集積と,信頼性の高い成績が期待される.
このような潮流から察すると,遠くない時期,科学的根拠を基に胃がん検診ガイドラインのお墨付が得られるのではないか.それに併せて先に述べた運営面での問題点を克服すれば,ABC検診は一般に受容される対策型検診として,永続的,普遍的地位を確立するに相違ない.
検診の質
祖父江先生は,死亡率減少効果に加えて,検診結果の質の重要性について述べられたが,質の定義は曖昧で,客観的な評価方法が見あたらずお困りのようであった.この稿ではあえて“質とは検診結果による社会や個人へ及ぼす影響”とすることをお許し頂きたい.若年層の検診を意識したイメージと理解して差し支えないだろう.がん対策推進基本計画をみると,75歳未満の年齢調整死亡率を算出する点で,この質に対する一定の配慮がうかがえる.趨勢としては,検診の効率性,言い換えれば“量”を重視する観点から,がん発生が増す高齢世代に対象の集約を唱える論調の報告もみられるが,いかがなものであろうか.
混迷を極める現状の日本社会は,今後若い現役世代によって支えられ,活力を生み,未来へ導かれる.健康を過信しがちなこの世代を,決してがんで失うことがあってはならない.個々の深い悲痛はもちろん,日本全体にとっても著しい損失となるだろうから.
先日胃がんで亡くなられた俳優の児玉 清氏は,幼子を残して30歳半ばで他界した娘さんのことを,生前ラジオ番組で一度だけ語ったことがある.知性と理性がダブルスーツを着たような品格溢れる氏が,嗚咽で言葉をつまらせながら,愛娘を失った無念な心の内を明かされた.娘さんは進行胃がんであった.
半年ほど前のことである.京都市内にある小学校の図書委員で活動していた児童の母が,30代前半の若さで死をとげた.3人目の子供を妊娠した際に,悪阻が収束しないため精査したところ,進行胃がんが発覚したという.死期が近いことを悟った母は,少しでも我が子との時間を大切にしようと,死の床に伏せる直前まで気丈に学校のボランティアに力を注いだ・・・.
これ以上の言葉は必要あるまい.質に対してもっと真剣に取り組むべきであることは,20歳からその恩恵が受けられるようになった子宮がん検診の方策をみても明白である. ABC検診は,若年層にも対象を拡げることが容易な合目的手段として,現時点では最良であろう. 世代によらず積極的に胃がん危険群を抽出し,系統だった管理あるいは早期にピロリ菌の除去を行えば,胃がんの魔の手から救えるかもしれない.むろん科学的根拠の裏付けは必要だが,時間に余裕はない.
健康を守る役割の原点
検診の大義は,がんから住民の健康を守ることである.この清らかな理念を形にするためには,検診は有効かつ安全だけでなく,その質についても論じるべきことはすでに述べた.このことは医療一般にも,幅広く認識されるべきテーマである.近年の革新的な医療技術や進化する機器の渦を傍観していると,住民や患者の利益につながる “奉仕”という,私どもにとって誠に大切な徳目が,波間に沈んでいくような気がしてならない.この診療行為が本当に善なのか・・・時に自問自答してしまう.もう一度原点に立ち返って,誰のための何の目的の検診・医療なのかを,個々に見つめ直すべきではないだろうか.
京都府医師会 消化器がん検診委員会 委員長 福光眞二
最近の糖尿病診療と保険上の留意点
糖尿病は,日常診療において遭遇する機会が増えただけでなく,あらゆる領域の疾患群に少なからず関与していることは言うまでもない.今回の社会保険研究会では,京都糖尿病医会会長として指導的立場で活躍される和田成雄先生から,実地医家の視点で最近の糖尿病診療,保険上の留意点について概説していただいた.
全国には糖尿病の可能性が否定できない人を含めると2310万人(2007年)に達するが, 60-79歳で約60%を占め,糖尿病によって余命は10年ほど短くなるという.超高齢化社会を迎える我が国の近未来を思うと,看過できない数字である.治療の目標は,合併症の発症,進展の阻止により“健常な人と変わらない日常生活の質(QOL)の維持,寿命の確保“にある.それには血糖のみならず血圧、脂質、禁煙などの集約的な管理が必要であり、また食後血糖の是正と食前低血糖の防止という“良質な血糖コントロール”を目指すことが肝要である. この点,日内変動を評価できるCGM(持続血糖モニタリング)が普及すれば,有用なツールになりえるであろう.
経口血糖降下剤は,従来HbA1c6.5%(JDS)以下でグリニド,αGI製剤,6.5%以上でSU剤が第一選択であったが,今回力点を置いて解説されたDPP4阻害薬の登場で,糖尿病治療は大きく変貌している.すなわちGLP-1の作用による,血糖値に依存したインスリン分泌促進やグルカゴン分泌抑制をはじめ,胃蠕動運動抑制,インスリン感受性改善が,血糖コントロールに優れた効果をもたらす.さらに膵外作用として,心血管イベントの抑制,腎保護効果の成績など多面的な効果が報告されている.自院の症例解析では, SU剤との相性がよく肥満者にも有効例は見られ,不十分な食事療法や服用中止での悪化あるいは投薬数量が増える傾向との成績を示された. 保険診療上の留意点については,審査員による多少の解釈の違いに触れた上で,指導管理料算定要件,薬剤や検査に対する適応病名,併用制限などの事項について細やかに解説された.
今日,DPP4阻害薬をはじめとする経口血糖降下剤などを駆使することで,“良質な血糖コントロール”が得られるようになってきた.他方,糖尿病治療の根幹は,食事療法や生活習慣の管理に相違ないことから,専門医の助言を取り入れつつ,広く実地医家が主体となって糖尿病診療を担当する態勢が必要であろう.本講演の狙いはこの点に帰結するのではないか.
京都における胃がん検診の現況:第90回京都消化器医会総合画像診断症例検討会 特別講演要旨
X線検診の不合理性を踏み台として内視鏡による対策型胃がん検診(地域検診など)の実現が叫ばれてから久しい.しかし沸騰した議論も空しく足踏み状態が続いている.最大の要因は厚労省研究班が“内視鏡検診は死亡率を改善する証拠がなく,対策型検診として勧められない・・・”という判断を示した点にある.反面,仮に内視鏡検診が動き出したとしても,精度管理や偶発症への対応など受け皿としての整備が充分になされているだろうか.一方,人間ドッグのように個人の死亡率改善を期待する任意型検診は,内視鏡が主体となった効率的運営に基づいて一定の成果がみられ,被検者の受容性は高い.胃がん検診の現況と問題点を異なる角度から概説する.
京都府医師会 消化器がん検診委員会 委員長 福光眞二
消化管出血: H20年12月30日京都新聞コラム掲載
消化管出血って?消化管は食べたものを消化吸収そして排泄する臓器で,食道,胃,小腸や大腸で構成されています.その中に生じる潰瘍,炎症や癌が原因となって消化管出血が引き起こされます.具体的にどのような病気があるかというと,血管が露出した胃潰瘍や進行した肝臓病に合併する食道胃静脈瘤のように,大量出血となって命の危険にさらされるものがあります.一方,細菌感染性腸炎や最近増加が著しい潰瘍性大腸炎などの炎症や胃癌,大腸癌では概ね少量持続的に出血します.
どのような症状?
血液が口,肛門から排出されることをそれぞれ吐血,下血と言います.吐血はコーヒーのような黒茶色の吐物として観察されます.下血では食道や胃十二指腸からの出血の場合は墨のように真っ黒な便が排出されますが,大腸からの出血では赤みを帯びることがあります.また急速に貧血が進行すると,通常みられないふらつき,動悸,冷汗や顔色不良などの症状があらわれます.もちろん少量持続的な出血では特に症状はみられません.
治療はどうするの?
消化管出血を疑う際は診断のために内視鏡検査を行うことが必要で,出血源がわかればそのまま止血処置を行うことがあります.例えば胃潰瘍が見つかれば中心部を詳しく観察し,露出している血管をホッチキスのような装置で挟むか薬剤を注入することで出血を抑え込んでしまいます.ほとんどの症例は内視鏡で対応できますが,レントゲン下で血管の中にカテーテルという管を入れて処置をする場合や手術にまわることもあります.腸炎や癌からの出血は短時間に大量出血することは稀ですから,原因を取り除く治療を優先します. 気をつけておきたいこと
医療技術の進歩で消化管出血は克服されつつありますので,症状に気づいたら直ちに医療機関を受診することが大切です.また微量な出血を把握することが癌など重大な病気を発見するきっかけになりますから,かかりつけ医療機関への相談や検便による大腸がん検診を積極的に利用しましょう.
京都府医師会協力・京都消化器医会理事・京都府医師会消化器がん検診委員会委員長 福光眞二